第1話 シェア率とは「お客様とのシンクロ率」である
店長は毎日、一生懸命仕事をしています。
自店のホールを巡回し、営業データを確認する。スタッフと話し、販促を考え、競合店も見に行く。それでも、業績が上がらないことがあります。
なぜでしょうか。
一つの可能性として、私は「努力していることと、お客様が望んでいることがズレている」と考えます。
たとえば、昔よく見かけたラーメン店。お客様が入ってくると、「いらっしゃいませ!」と、スタッフ全員が大きな声で挨拶する。活気があっていいと感じる人もいるでしょう。一方で私は、あまり好きではありませんでした。大声の挨拶自体は、スタッフの精一杯の努力です。けれども、それが必ずしもお客様の心に届くとは限りません。
働いているスタッフは真剣です。努力していないわけではない。それでも売上につながらないとすれば、努力の量ではなく、努力の方向とお客様のニーズが乖離している可能性があります。パチンコ営業でも、同じことが起こります。
お客様は心の中で「いいね」を押している
パチンコ店では昔から、稼働調査、いわゆる「頭取り」を行っています。現在ではクラウドサービスも普及し、自店だけでなく商圏全体の稼働状況やシェア率の推移を確認できる環境が整っています。
たとえば、ある時間の商圏人口が300人で、自店のお客様が100人なら、自店のシェア率は約33.3%です。
私は、このシェア率を単なる「市場占有率」とは考えていません。商圏のお客様が、自店にどれだけ「いいね」を押してくれているのか。その結果が表れた数字だと考えています。
お客様が「こっちの店の方が楽しそうだな」と思えば、心の中で「いいね」を押して来店する。逆に「最近、この店は面白くないな」と思えば、「バッド」を押して別の店へ行く。お客様一人ひとりの選択が積み重なった結果が、シェア率として表れているのです。
シェア率は「シンクロ率」
私はセミナーで、この話をするときに『エヴァンゲリオン』の「シンクロ率」に例えることがあります。パイロットの心とエヴァの意志が一致するほど、シンクロ率は上がる。逆にズレが生じれば、機体はうまく動きません。
これは、営業とお客様の関係にもそのまま当てはまります。営業がうまくいっていると、私たちはつい「自分の考えが正しかった」と思いがちです。しかし正確には、「自分たちの考え」と「お客様の心」がシンクロしている。だから、お客様に選ばれ、シェア率が上がっているのではないでしょうか。
逆にシェア率が下がっているなら、シンクロ率が落ちている。私は、そのシンクロ率を確認する指標の一つが、シェア率だと考えています。
過去に業績を上げた店長ほど、「以前はこれで成功した」という成功体験を持っています。しかし、お客様も競合店も市場環境も変わり続けます。過去の成功パターンを繰り返しても、今のお客様の心とシンクロしていなければ、成果にはつながりません。
うまくいかないときほど「自分の中」に答えを探さない
ここが、今回もっとも伝えたいことです。
シェア率が上がっているときは、自分たちの考えとお客様の心がシンクロしている可能性が高い。だから、自店をよく見る。どんなお客様が増えているのか。何を評価していただいているのか。もっと喜んでもらうためには何をすればいいのか。今やっていることの精度を高め、成功している戦略をさらに伸ばしていく局面です。
ところが、頑張っているのにシェア率が下がっているときは、行動を変えなければいけません。普段から一生懸命考え、一生懸命仕事をしている。それでもお客様に選ばれていない。だとすれば、自分の中だけをどれだけ探しても、答えが見つからない可能性があります。
そんなときほど、競合店を見る。商圏を見る。そして、自店のホールで実際のお客様を見る。うまくいっていないときほど、お客様の心に問う。これが大切だと思います。
データは「見た」だけでは投資を回収していない
稼働調査にもコストがかかっています。人が競合店を回れば人件費がかかる。クラウドサービスを利用すれば利用料がかかる。店長がデータを見る時間にも、当然コストがかかっています。つまり、データは会社にとって一つの投資です。
にもかかわらず、「昨日のシェア率は○%だった」「競合A店は○人だった」と確認して終わってしまったら、それは数字の羅列にすぎません。データの価値は、何らかの判断と行動に結びついて初めて生まれるのです。
だから私は、シェアが上昇しているときと減少しているときとでは、店長の日々の行動そのものが変わっていいと考えています。シェアが上昇しているなら、自店を見る時間を増やして成功の理由を深掘りする。シェアが減少しているなら、出勤して自店のデータを見る前に、競合店へ行ってみる。
そこで見て、感じたことを、今度はデータで確認する。「データを見る→現場を見る」だけではなく、「現場を見る→仮説を持つ→データで確認する」。結果が変われば、店長の時間の使い方も変える。データとは、本来そのためにあるものだと思います。
最後に、店長の皆さんに一つ問いかけたいと思います。
あなたの店では、シェアが上がっているときと、下がっているときで、店長の行動は変わっていますか?
シェア率は、ただの占有率ではありません。お客様の心と、自分たちの営業の「シンクロ率」です。
その数字が下がっているときこそ、自分の中に答えを探すのではなく、商圏へ、お客様へ、答えを探しに行く。そこから次の一手が始まるのだと思います。



