第8話 新台投資の最大化
ほとんどのパチンコ店にとって、最も大きなコストは新台だと思います。
では、その投資を活かす力は、何をもって測られているでしょうか。
どの機種を選んだか。
何台買ったか。
競合店より多く導入できたか。
もちろん、それらも一つの指標です。
しかし私は、もっと大切な数字があると考えています。
購入した一台を、どれだけ活かすことができたのか。
ここです。
例えば、新台の全国平均稼働に対して、昨年の自店が90%だったとします。
それが今年、95%になった。
私は、これも立派な成長だと思っています。
競合店より台数が多いか少ないかではない。
自分たちが投資した機械のポテンシャルを、前年よりどれだけ引き出せるようになったのか。
そこに目を向けるべきだと思うのです。
ところが現場では、どうしても競合店が気になります。
「あの店は20台入る」
「うちは5台しか入らない」
「台数で勝てないのだから、そこまで強くアピールしなくてもいいのではないか」
こうした話を耳にすることがあります。
確かに、台数という戦力だけを比較すれば、競合店の方が圧倒的に有利かもしれません。
大型店と中小店では、投資できる金額そのものが違うこともあります。
だから、
「この戦場では勝てない」
と考えてしまう。
戦略論の中には、勝てない場所では戦わない、という考え方があります。
それ自体は間違っていません。
しかし、新台について考える時には、一つ大きな勘違いが起きているように思います。
その新台を一台でも購入した時点で、もう戦いに参加しているのです。
買わない。
投資しない。
そこまで決めるのであれば、戦わないという判断もあるでしょう。
しかし、すでに資金を使って機械を購入し、店舗に設置し、お客様に提供することを決めている。
そこまで進んだのであれば、もう戦場の外にはいません。
にもかかわらず、
「競合店の方が台数が多いから」
「お付き合いで購入した機種だから」
という理由で、導入前のプロモーションまで弱くしてしまう。
私は、それは非常にもったいないことだと思います。
台数で勝てないのであれば、別の価値で勝てばいい。
- 情報の速さ。
- 分かりやすさ。
- 楽しみ方の提案。
- 導入前から期待してもらうための発信。
そして導入当日に、
「この店は、この新台に力を入れているな」
と感じてもらえる売場づくり。
こうした部分は、台数とは別の戦い方です。
私は、お客様が新台に着席するまでには、大きく三つの段階があると考えています。
まずは、認知です。
「こんな新台が出る」
「この店にも導入される」
ということを知ってもらう。
次に、関心です。
「どんなスペックなのか」
「何が新しいのか」
「どこが面白そうなのか」
導入される前からその魅力を伝え、関心を持ってもらう。
そして最後に、着席です。
実際に導入された時に、
「あの新台、導入されたんだ」
「この店で打ってみよう」
と思ってもらう。
この三段階を、どれだけ丁寧につくれるか。
私は、ここにも営業力の差が出ると思っています。
特に大切なのが、情報です。
お客様が知りたい情報を、知りたいタイミングで提供する。
新しい機械が出る。
どんな機械なのか。
何が魅力なのか。
いつ入るのか。
そうした情報を自店から継続して受け取っているお客様にとって、その店は単なる「機械が置いてある店」ではなくなります。
気になる情報をくれる店になる。
情報そのものが、一つの価値になるのです。
そして導入日を迎えた時、
「この店からずっと情報をもらってきたから、まずはここで打ってみよう」
そんな気持ちにつながることもあるでしょう。
つまり、新台の販売促進とは、導入当日に始まるものではありません。
導入前から認知をつくり、関心を高め、最後に着席につなげる。
そこまでを一つの営業として設計する必要があります。
お金を使った瞬間から、投資は始まっている。
私はそう考えています。
そして投資である以上、その価値を最大化するために、愚直に考え、実行する。
それが営業であり、経営ではないでしょうか。
大切なのは、
競合店が何台買ったかではありません。
自分たちが買った一台を、どこまで活かし切れたかです。
私が好きな言葉があります。
「他人が自分より優れていたとしても、それは恥ではない。しかし、去年の自分より今年の自分が優れていないのは、立派な恥である」
――ジョン・ラボック
この言葉を、自分たちの営業に置き換えて考えてみる。
昨年より今年の方が、機械を活かす力が高まっているか。
昨年より今年の方が、お客様にその魅力を伝える力が高まっているか。
そこは、自分たちで変えることができます。
比べるべき相手は、競合店だけではありません。
昨日までの自分たちを、超えられたか。
その積み重ねこそが、自分たちの営業力を高め、投資を最大化する力になっていくのだと思います。



