第6話 ボトムアップができる組織
「もっと現場からアイデアを出してほしい」
経営者や幹部の方から、そんな話を聞くことがあります。
店長が指示を出さなければ動かない。
社員からなかなか意見が出てこない。
会議で「何かアイデアはない?」と聞いても、誰も発言しない。
そこで、
「もっと自分たちで考えよう」
「どんどん意見を出してほしい」
と伝える。
しかし、それだけでボトムアップの組織になるでしょうか。
私は、ボトムアップとは単に「現場に自由に考えてもらうこと」ではないと考えます。
意見を求める事がボトムアップではない
前回、現場を動かす「ミッション」について書きました。
たとえば、
「自店のシェアを上げよう」
という目標だけでは、一般社員やアルバイトスタッフの方は、自分が何をすればいいのかなかなかイメージできません。
だから、
「どの競合店の、どのお客様に、自店を選んでもらうのか」
というところまで具体化する。
さらに、
「競合A店の夜のジャグラーのお客様5人に、自店を選んでもらおう」
というように、現場がイメージできるミッションに変えていく。
ここまで具体的になると、現場の見え方が変わってきます。
「じゃあ、競合A店のお客様は何を求めているんだろう?」
「自店との違いは何だろう?」
「自分たちにできることは何だろう?」
考えるための焦点が生まれるからです。
私は、ここがボトムアップのスタートだと思っています。
リーダーが戦術を語る
ボトムアップというと、
「現場に任せる」
というイメージを持たれるかもしれません。
しかし、私は少し違うと考えています。
まず必要なのは、リーダーが目標を示すこと。
そして、
なぜその目標を目指すのか。
どこを狙うのか。
どのように戦おうとしているのか。
その戦術を、熱意を持ってチームに共有することです。
リーダー自身が本気で達成したいと思っていなければ、その熱は現場には伝わりません。
反対に、
「このお客様に自店を選んでもらいたい」
「そのために、こんな店をつくりたい」
とリーダーが本気で語る。
そして、その戦術を現場が「自分たちのミッション」として受け取ったとき、現場から出てくるアイデアの質が変わってきます。
さらに大切なのが、目標を伝えて終わりにしないことです。
「ライバル店の強みである夜のお客様を、今月は何名、自店に選んでもらうのか」
その具体的なミッションをチーム全員が理解し、目標に対して今どこまで来ているのか、その経過も共有する。
目標と戦術、そして経過が共有されることで、ミッションは店長だけのものではなく、チーム全体のものになっていきます。
社員2名が出勤前に競合店を見に行った
以前、こんなことがありました。
店長から戦術を共有された社員2人が、出勤前に自分たちで競合店を見に行きました。
店長から、
「競合店を見てきなさい」
と指示されたわけではありません。
チーム全員が今月のミッションを理解し、その目標に対する経過も共有されていました。
だからこそ、
「目標を達成するために相手のお店を見に行こう」
と、自分たちで考えたのです。
そして競合店を見たあと、休憩室で2人で話をした。
「自分たちの店だったら、何ができるだろう?」
「ここは、こうした方がいいんじゃないか?」
そうやって考えたアイデアを、店長に提案しました。
私は、こういう姿を見ると、
「これこそボトムアップなんじゃないか」
と思います。
上司から言われたからやるのではない。
自分たちが目指しているものを理解しているから、自ら情報を取りに行く。
自分たちで考える。
仲間と議論する。
そして、上司に提案する。
ここまで来ると、その社員は単に「指示された仕事をする人」ではありません。
それは、もう次世代幹部の意識ではないか
少し考えてみてください。
会社の目標を理解する。
戦術を理解する。
その実現のために、自分で課題を見つける。
必要な情報を自ら取りに行く。
仲間と考える。
そして、自分なりの答えを持って上司に提案する。
これは、店長や幹部に求められる仕事と、それほど大きく違うでしょうか。
私は、こうした行動ができる社員を見ていると、
すでに次世代幹部としての意識が芽生えているのではないか
と思います。
以前から私は、店長自身が目標達成の主体となり、自ら考え、判断し、挑戦することが大切だと考えてきました。
そして、挑戦する上司の姿を見て、その部下もまた挑戦する。
その連鎖が組織を強くしていくのだと思います。
次世代幹部は、研修だけで育つのか
次世代幹部育成というと、
研修をする。
勉強会をする。
役職を与える。
そんな方法を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それらも必要だと思います。
しかし私は、日々の営業そのものが、次世代幹部を育てる場所にもなると考えています。
ボトムアップができる組織をつくることは、単に現場からアイデアを集めることではありません。
目標を共有し、戦術を共有し、その経過を共有する。
そして現場が自分たちのミッションとして考え、行動できる環境をつくること。
その先に、次の店長が育ち、次の幹部が育っていく。
御社では次世代幹部の意識は、誰が、どのように、育成されていますか?



