実践マーケティング思考

第7話 選ばれる理由は、お客様の感情の中にある

私がまだ若い店長だった頃の話です。
当時、私は「海物語」の設置台数が非常に多い店舗を任されていました。
そのため、海物語の業績が、そのまま店舗の業績を左右すると言ってもいいほど、重要なカテゴリーでした。

年度計画を立て、夏頃までは順調に計画を達成していましたが、毎年のように同じ問題が起きました。
秋から冬にかけて、海物語の稼働が落ちるのです。
これは前年にも起きた課題でした。
特に大きく落ちていたのが、午前中から昼過ぎにかけてでした。

なぜ、この時間帯なのか。
会員データを見ると、海物語のお客様にはシニア層が多いことが分かっていました。
寒くなれば、外へ出ること自体がおっくうになる。
とくにシニアにその傾向が強いということが分かりました。

だったら、暖かいものを用意すればいいのではないか。
若かった私は、そう考えました。
そこで朝の開店前、店舗の前に石油ストーブを置いたのです。

鍋、こたつ、囲炉裏、キャンプファイヤー。
人は昔から、暖かいものを囲んで時間を過ごしてきました。
ストーブを囲んでもらえば、そこに自然と人が集まり、お客様同士の交流も生まれるのではないか。
『プロジェクト暖(だん)』と名付け、自分では、なかなか良いアイデアだと思っていました。

ところが、実際にやってみると、お客様は集まりませんでした。
私はストーブの前に立って待っていましたが、期待していたような状況にはなりません。

暖かい。
確かにそれは、お客様にとって一つの付加価値です。
でも、それだけでは人の行動は変わらなかったのです。

ここで諦めず、もう少しお客様のことを考えてみました。
海物語のお客様は、何を求めて店に来ているのだろう。

もちろんパチンコですから、勝ち負けはあります。
しかし、私が現場で接していたシニアのお客様の中には、それだけではなく、店舗に「第二の居場所」を求めている方が多くいました。

いつもの人に会う。
少し話をする。
同じ時間を一緒に過ごす。

そう考えると、必要なのは単に「暖かい場所」をつくることではありません。
そこに行ってみたくなる理由が必要なのではないか。

そこで次に目をつけたのが、飴でした。
せっかくなら普通の飴では面白くない。
調べていく中で、当時、銀座三越でも扱われていた榮太樓の飴にたどり着きました。
その当時、私が調べた中では日本一高価な飴でした。

私は実際に銀座三越まで足を運び、いろいろな飴を買ってきました。
そしてお客様に声をかけました。
「日本一高い飴を、食べたことはありますか?」

飴をお渡しして、感想を聞く。
「こんな美味しい飴は初めてだよ」
そんな言葉をいただきました。
そしてその飴を開店前の時間にストーブの前でお配りしました。

すると、今度は少しずつ状況が変わりました。
飴を舐めている間、お客様がストーブの近くにいてくれるようになったのです。

私はその輪の中に入り、会話を盛り上げました。
そして、お客様と私だけで話すのではなく、お客様同士がつながるように話を振っていきました。
いつしか、それが朝の私の大切な仕事になっていました。

結果として、その年は午前中の稼働低下が例年より緩やかになり、年間の売上・稼働計画を達成することができました。
振り返ってみると、この経験は、私がマーケティングを学び、実践していく原点の一つだったように思います。

ストーブを置く。
飴を配る。
それ自体がマーケティングなのではありません。
重要なのは、その先です。

増客とは何でしょうか。
私は、単純にお客様の人数を増やすことだけではないと考えています。

競合店を選んでいるお客様が、
「いつもの店より、こちらの店に行ってみよう」
と意思を変える。
そこまでいって、初めて増客につながります。

例えば、競合店が海物語をおすすめしている。
だから自店も海物語をおすすめする。
それだけで、競合店に通っているお客様の行動は変わるでしょうか。
私は難しいと思います。

「こちらの方が少し良さそう」
という机上の比較だけでは、人は簡単には習慣を変えてくれません。
相手は数字ではなく、人間だからです。

  • その人は何歳なのか。
  • 普段どんな生活をしているのか。
  • なぜその店へ行っているのか。
  • 何を楽しみにしているのか。
  • 何をされたら嬉しいのか。
  • どんな場所なら、明日も行きたいと思うのか。

そこまで具体的にお客様を想像する。
そして、感情に突き刺さり、実際の行動が変わるところまで考え、実行する。
私は、そこまでやることがマーケティングだと思っています。

あの時、ストーブだけではお客様は動きませんでした。
だからこそ、もう一歩考えた。

暖かさだけでは足りない。
飴だけでも足りない。
そこに会話が生まれ、人とのつながりが生まれ、「ここに来ると楽しい」という感情が生まれる。
結果として、店が第二の居場所になっていく。

選ばれる理由は、商品や広告の中だけにあるのではありません。
選ばれる理由は、お客様の感情の中にある。

だから私たちが考えるべきなのは、
「何を売るか」
「何をおすすめするか」
だけではありません。

目の前のお客様の感情を、どこまで想像できるか。
そして、
その感情が実際の行動に変わるところまで、やり切れるか。
答えはいつも、お客様の中にあるのだと思います。

まずは話を聞いてみる

売れるは偶然、選ばれるは設計。

自店が選ばれる理由を、一緒に考えませんか。

まだ課題が整理できていなくても大丈夫です。
店長育成、競合店対策、会議の進め方、営業計画など、今感じている違和感や困りごとを、そのままお聞かせください。

まずは現在の状況を一緒に整理し、フリコユラスがお役に立てるのか、どのような支援が合うのかを一緒に考えます。

セミナーで参加者に語りかける講師
対話から、次の一手を。

無理にサービスをおすすめすることはありません。
相談=契約ではありません。まずは現状整理から。

まずは30分程度、現在の営業課題を一緒に整理します。
研修が合うのか、競合店対策が必要なのか、今の状況に合った進め方を考えます。